その2. クミヤマ病院の病室にて・・・

 

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もくじはこちら

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【新たな登場人物】

 

森本(25歳)

ユージの高校時代からの友人。 良き理解者。

ユージは高卒だが、森本は大卒。 愛車はBMW。

 

前回までに登場した人物はこちら

 

 

 

【その2. クミヤマ病院の病室にて・・・】

 

 

「お母さんが倒れた。 ユージ、お前は今どこにいるんや!

 

お母さんは今から救急車でクミヤマ病院へ運ばれる。

今すぐクミヤマ病院へ来なさい!!」

 

「わ、わかった。 今すぐ行く!!」

と言って電話を切ったが、電話を切った手は少し震えていた。

 

「わりぃ森本、クミヤマ病院まで送ってくれ。」

 

森本の愛車のBMWで、クミヤマ病院まで送ってもらうことになった。

 

 

ちなみに森本の父親は大学教授でそこそこの金持ちである。

 

森本も俺と同じプータローだが、彼は俺と違って大学には行っている。

 

 

 

もともと、大学には行くつもりはなかったのだが、

大学教授の息子が高卒とはシャレにはならないということで、

ムリヤリ大学に行かされたらしい。

 

森本は俺と同じくオツムはそんなによろしくないので、

当然のように大学では一切勉強などせず、

バイトと遊びとナンパとコンパに明け暮れた4年間を過ごした。

 

就職活動なども当然せず、今、俺と同じくプータロー生活を送っている。

 

愛車のBMWはもちろん父親の金で買ってもらった車だ。

 

「こんなロクでもない奴にBMWを与える父親だからこそ、

こんなロクでもない息子が出来上がるんだろうな・・・」

と思うし、森本にもよく冗談で言っている。

 

まぁ、俺も人の事を言えた義理じゃないが・・・(笑)

 

そして俺は未だに原チャリしか持っていないので、

森本と遊びに行く時は森本のBMWで移動することに決めている。

 

特にナンパの時は森本のBMWに限る。

 

カワイイ女が引っかかる確率が格段に上がるためだ。

 

 

オヤジから電話がかかってきたその時も、

当然、森本のBMWで四条河原町まで出てきていたので、

クミヤマ病院まで森本のBMWで行くことになった。

 

 

そして、クミヤマ病院に着き、フロントで病室を聞き、急いで病室に向かった。

 

なぜか森本も一緒に病室まで付いて来ている。

 

 

病室に着くとオカンは真っ青な顔をしてベッドで寝ていた。

 

俺の2人の妹はベッドの横の椅子に座っており、

オヤジはベッドから少し離れた場所で立っていた。

 

ちなみに上の妹はひかり、下の妹はきょうかで、1つ下と4つ下だ。

 

ひかりは冷静を保っていたが、きょうかは泣いていた。

 

 

 

「オカンの具合は・・・??」

 

 

「大丈夫・・・ アルバイト先で倒れたみたい・・・」

 

ひかりが答えてくれた。

 

「そ、そっか・・・」

 

そして、オヤジが口を挟んだ。

 

「ユージ! お前は仕事もロクにせんと、

今日もどこをほっつき歩いてたんや!!?」

 

「い、いや別に・・・」

 

「別にやないやろ!!」

 

「お母さんは、お前ら3人のために昼間は近所のスーパー、

夜もファミレスでアルバイトをしているんは知っているやろ・・・!!?

ユージ、お前は高校を卒業したけど、ひかりときょうかはまだ大学生や。

授業料も払っていかなアカンし、その他にもまだまだお金がかかる。

しかもお前は自分の食い扶持すら稼いでへん状態や・・・!!」

 

「分かってる・・・」

 

「分かってるやないやろ!!

ユージ、お前はホンマにお母さんの苦労を分かってるんか・・・!!?」

 

「お父さん、おにぃのお友達も来てくれてるし、もうヤメて・・・」

 

きょうかが泣きながら口を挟んでくれた。

 

森本は心の中で、

「お、おぃユージ、、、とんでもないトコに連れてくれたなぁ・・・」

と思っていた。

 

俺のオヤジは、森本の事も冷たい目で見ていた。

 

「コイツのせいで、ワシの息子がロクに働きもせず毎晩ほっつき歩いて・・・」

と言わんばかりの目で・・・

 

 

その後、しばらくの沈黙が続いた後、オカンが目を少し開けた。

 

「ユージか、、、来てくれたんやなぁ。

お母さんバイト先でコケてしまってなぁ・・・

ビックリさせてゴメンなぁ・・・」

 

「オカンは何も悪くないよ・・・」

と言おうと思ったが、先に涙が出てしまい、

「うん・・・」としか言えなかった。

 

冷静を保っていたひかりまで泣き始め、

オヤジは腕を組んで天井を睨んでいた。

 

 

「なぁ、ユージ、オレ車で待ってるわ。」

 

「あぁ・・・」

 

森本はそう言い、そそくさと病室を出て行った。

 

「始めから車で待ってればいいものを

アイツも相変わらず空気の読めへん奴や。」

と一瞬思ったが、今は森本の事よりも、

自分の情けなさに家族の誰にも顔向け出来ない心境だった。

 

オカンがまた口を開き、消え入りそうな声で、

「ユージ、あのお友達に送ってもらったんやろ・・・??

待たせたら悪いし行ってあげ。

ユージ、来てくれてありがとうなぁ・・・」

 

「う、うん。 ほな、行くわ・・・」

と言って俺は病室を出た。

 

病室を出る時、ひかりときょうかは、

「え・・? ホンマに行くの??」

という表情をしており、オヤジは完全に俺を睨んでいた。

 

でも、この病室の空気に耐えるだけの余力がもう俺には残っていなかった・・・

 

 

 

 

森本が待つBMWに戻るために病院の廊下を歩いている間、

なぜか涙が止まらなかった。

 

なぜか・・・??

 

いや、理由は分かっていた。

 

情けなかった・・・

 

オヤジの怒り。

 

妹の冷たい目。

 

オカンの優しさ・・・

 

遂に嗚咽を上げてしまい、声を上げて泣いてしまった。

 

 

「オ、オカン・・・ ゴメン!!!」

 

 

 

その3.へ続く・・・